2008年12月6日土曜日

バガボンド 29 (29) (モーニングKC)




吉岡門下70人の精鋭との殺戮をくぐり抜けての2巻目。剣士として致命的な右ふくらはぎの深い傷は癒えぬまま、武蔵は届けでなく決闘した罪で投獄されるのだが・・・。

ここ最近本作が描くのは強さ、とは別の形で現れる「強さ」だ。

武蔵がここまで我々読者に知らしめてきた強さとは、幾人もの強者の屍の重なりの上にかろうじて存在する類の強さである。

一見それはこの上ないもののように思える。

しかし人の死によってはじめて成り立つという他律的な強さが、本当に「強い」と言えるのだろうか?

強さを証明するために、その都度目の前に現れる敵を斬り伏せなければならない。

強さに固執する限り、「殺し合いの螺旋から」永遠に抜けることがその生き方が、本当に強いと呼べるのだろうか?

強さのその向こうにあるはずのもう一つの強さに、沢庵和尚が彼を「人はなぜ生まれ 如何に生きるべきか」という実存的問いを通していざなおうとする。

さもすれば単調になりそうな禅問答のような会話のやり取りを、「魅せるもの」にかえる作者の技量にも驚嘆。

静かな情景に、静かなやり取り。そこに命の奪い合いは起こらない。

しかし、個々の生き様、信念がはげしく交錯する第29巻。

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